Explore East Hokkaido
旬の観光スポット
エネルギーみなぎる火山群と太古の湖、
そして伝統的な文化
阿寒
阿寒摩周国立公園、そこはアウトドアアクティビティーと、さらにアイヌ文化と日本文化の融合をも堪能できるこの上なく魅力的な観光スポットです。地質学的に活発な歴史を経て形成された火山と大地が織りなす素晴らしい風景は、日本はもちろん、世界的に見てもトップクラスの景観です。
1934年に国立公園として指定された阿寒摩周国立公園は、明治政府が北海道開拓に乗り出した頃からその景観に定評がありました。国立公園の西側に位置する円錐状の火山(成層火山)、雌阿寒岳(標高1,499m)の頂上からの眺めは壮観としか言いようがありません。沸き立つ蒸気孔の火口の西側には阿寒富士(標高1,476m)の噴石丘が、そしてその向こう北東約15kmに雄阿寒岳(標高1,370m)の山の端が、阿寒湖を手前にしてくっきりと見えます。雄阿寒岳は、実際には雌阿寒岳のほうが高いにもかかわらず、周囲に取り囲む山がなく孤立して聳えているせいか、この地域で一番高い山のように見えます。
3つの火山には、それぞれの頂上に到達できる比較的険しい登山道があります。登山愛好家にとっては一年を通じて楽しめる登山道です。一方、阿寒湖畔には、湖畔の街から一風変わった名前の湖畔の人気スポット「ボッケ」までつづく小道のように、家族連れの散歩にふさわしい遊歩道もあります。また、阿寒湖から雌阿寒岳と阿寒富士山頂を越えてオンネトーまで下るコースは1日がかりの本格的な登山道で、季節を問わず壮観で見ごたえのある景色が楽しめます。特に秋はまるでパレットのような鮮やかな景観を味わうことができます。ボッケ遊歩道はモダンな建物が居並ぶホテル街をぬけたところに入り口があります。しばらく歩くと、蒸気と火山ガスの上昇で粘着性の泥水がボコッ、ボコッと音をたててゆっくりと沸き立つ地点に到着します。地質学的にとても珍しいスポット(泥火山地帯)です。「ボッケ」の地名はアイヌ語の「煮え立つ」という意味を含み、泥の泡が破裂する音に由来します。
阿寒はアウトドアに重点を置いたいわば多目的観光の中心地です。登山、森のウォーキング、フライフィッシング、アイスフィッシング、マウンテンバイク、スノーシュートレッキングなど、ここでしか経験できないアクティビティーが多く、季節ごとに違った楽しみ方ができます。
湖畔の阿寒湖温泉街は重要な観光スポットです。名前のとおり温泉ホテルが街の中心になっていますが、その一角に、アイヌ民族のコタンと呼ばれる集落があります。コタンにある劇場「イコロ」では、アイヌ古式舞踊をはじめとする、様々なパフォーマンスがアイヌコタンの人びとによって演じられています。「アイヌ古式舞踊」は1984年に国内で重要無形民俗文化財に指定され、国際的には2009年にはユネスコの無形文化遺産に指定されました。 イコロに向かう緩やかに傾斜した通りの両側には、アイヌ文様をモチーフとした様々な工芸品を展示販売する工房やレストランが並んでいます。日中には、アイヌガイドツアーが催されており、北方の厳しい自然環境の中で古くから育まれてきた人々の知恵に焦点を当てたツアーを楽しむことができます。
数十万年前、アイヌ民族が北海道に居住するずっと以前に、ここでは巨大にそびえ立つ火山が噴火して広大な阿寒火口が形成され、大きな湖が形成されました。1万5,000年前から1万年前の間に現在の景観に至った阿寒湖は、今も2つの小さな活火山に囲まれています。今の私たちには阿寒湖はとても大きいように見えますが、かつてはさらに大きかったと考えられています。
今日の阿寒湖は、北スカンジナビア・ロシア・カナダなどを彷彿とさせる密な北方林に囲まれています。これらの森にはヒグマを含む貴重な野生生物種が生息しています。また、巨大なサケ科のイトウや、藻類が集まって丸く形づくられたマリモなど、湖にもさまざまな珍しい水生生物が生息しています。日本の特別天然記念物のマリモは阿寒湖のシンボルであると言えます。湖が凍る冬場は、一夜にしてできる美しいフロストフラワーに出会えるかもしれません(ガイドツアー推奨)。また、氷に穴を開けワカサギ釣りを楽しむのもよいでしょう。
阿寒湖エリアを訪れたなら、国設阿寒湖畔スキー場「ウタラ」から白湯山へ至る白湯自然探勝路にもぜひ足を伸ばしてみてください。この道はボッケエリアを抜け、白湯山展望台へと続きます。展望台からは火山やカルデラ、湖の壮大な広がりとその規模を眼下に眺められます。
阿寒湖から少し離れた南西19 kmのところには小さくも美しい湖、オンネトーがあります。晴れた日にはこの火山湖の澄んだ湖面に雌阿寒岳が映えます。湖面を横切る光と影によってはその色彩が青から緑へとうつろい、阿寒摩周国立公園の中でも一、二を争う美しい光景が繰り広げられます。湖畔の散策は一年中いつでも楽しめます。ハクサンシャクナゲなどの野花が咲く初夏や、紅葉の色のコントラストが湖に映る秋は特に見ものです。
オンネトーには雌阿寒岳を目指す二つの登山道がありますが、湖の南側には、オンネトー湯の滝に通じる片道30分ほどの平坦な林道があることは見逃せません。湯の滝は国の天然記念物に指定されており、天然酸化マンガン(通常は海底に見られる)を陸上で見ることができる最大のマンガン生成場となっています。これは温泉水の中でバクテリアや藻が特殊な活動をすることによって作られたもので、生物がミネラル(鉱物)を生成するという珍しいプロセスの産物で世界的にも注目されています。
力強い火山の頂、手つかずの美しい湖、疲れた体を癒してくれる温泉、伝統文化、これらが組み合わさった阿寒の風景は他には類を見ないドラマティックなものです。春は芽吹いて色と香りが次々と移り変わり、夏は草木が青々と茂る。秋は色鮮やかで、冬はピンと張り詰めた空気が息を呑むほど美しい。皆さんもぜひ阿寒の四季折々の変化を楽しんでください。素晴らしい景色の中でとびきりに冒険に富んだ時間をお約束します。
原文(英語):マーク・ブラジル