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ひがし北海道の
壮大で美しい湖

屈斜路・摩周

 阿寒摩周国立公園は世界でも稀に見る風景であり、冒険と自然をまるごと楽しめる素晴らしい場所です。公園の東半分を占める巨大なカルデラは2つの風光明媚な火口湖、屈斜路(くっしゃろ)湖と摩周湖と共に、日本屈指の景観を形成しています。

 屈斜路湖は一年を通じ、その「美」を堪能させてくれます。屈斜路カルデラ西縁の美幌峠や北縁の藻琴山ふもとにある小清水峠の展望台からは、湖を含むカルデラの全容をパノラマビューで体感できます。カルデラの東縁部は長年の浸食で輪郭が劣化し、さらに小規模の火山活動が重なったことでよりドラマチックな地形に変化しました。摩周湖近辺のビューポイントから西を望むと、その壮大さがよくわかります。

 弟子屈(てしかが)町にある屈斜路湖は、日本最大のカルデラ湖であり、国内全ての湖の中でも6番目の大きさです。海抜121mの地点にあり表面積79㎢強、周囲長57km、平均水深28.4m(最大水深125m)です。湖の中央部には中島が、またその南岸には北方面に突き出す和琴半島が見えます。半島には散策路(和琴半島自然探勝路)が整備されていて、快適な森林浴を楽しめます。暖かい夏の日には愉快な鳥のさえずりだけでなく、「ミンミン」と繰り返すミンミンゼミの鳴き声も堪能できます。半島の入り口には露天風呂(和琴温泉)があり、誰でも入浴可能です。カヌーで湖を楽しむガイドツアーでは、半島突端の水位線にある噴気孔まで行くことができます。

 冬になるとこの巨大な湖は、噴気孔がある東岸と南岸の一部を除きほぼ完全に凍結します。湖面上には、蛇腹のような亀裂と氷丘脈が発生します。非常に神秘的な冬の現象、「御神渡り現象」です。そして氷が張らないエリアと冬の食料を求め、オオハクチョウの小さな群れがやってきます。早朝の霧の中、大きな体と声が特徴のオオハクチョウがこの世のものとは思えぬ姿を現し水の切れ目から飛び上がっていく、その様子は「冬の天使」と呼ぶに相応しい美しさです。

 オオハクチョウは渡り鳥で、冬になると亜寒帯であるロシア東部の繁殖地から日本に移動します。屈斜路湖で冬を越すオオハクチョウは、湖の東岸にある砂湯での姿が有名で、多くの人がシャッターを切っています。地熱で浜辺の砂が温まることから「砂湯」と称するだけあり、その場所は凍結しません。冬、オオハクチョウの憩いの場である砂湯エリアは、夏には地元のキャンプ場として人々の休養・探検・アクティビティ拠点となり、白鳥の甲高い鳴き声は人々の賑やかな声に変わります。キャンプ場は、和琴半島の入り口にもあります。

 屈斜路湖を源流とするのは唯一、釧路川です。湖の南東部にある眺湖橋(ちょうこばし)から始まる川ですが、この時点で既に幅広の河川を形成し、南方面に流れて釧路市で太平洋に合流します。水深は浅く林間を縫うように進むので、カヌーやフライフィッシングの愛好家に人気があります。

 近くには、先住民族アイヌにとって「山の神の湖」である摩周湖があります。道東観光をするなら外せないスポットです。摩周火口縁の西側にある2箇所のビューポイントからは「これぞ道東」というパノラマ風景が広がります。西に屈斜路カルデラと屈斜路湖、南西に阿寒火山、北東に斜里岳とその奥に知床半島を臨む、道内随一の景勝地です。南のはるか彼方には太平洋が広がります。晴天時の眺望は圧巻の一言に尽きます。

 摩周湖は絵に描いたような絶景です。晴れた日の湖面は驚くほど澄んだサファイアブルーで、地元のバーでは「摩周ブルー」と名付けたカクテルを提供しています。高さ200mの急峻な断崖が湖を囲み、水深212mの湖底は軽石で覆われています。カルデラに降った雨水は湖に流れ込んでも、火山地質のために地下に浸み出すか、あるいは蒸発してしまいます。また、この湖を源流とする清流や河川はありません。火口縁から湖岸に降りる道もなく何者にも邪魔されないという点で、この湖は完全な「秘境」と言えます。人間は、神々のすみかに入り込んではいけないのです。

 東側を見ると、澄み切った摩周湖の湖面と周辺の森が神々の山カムイヌプリ(別名「摩周岳」、標高857m)の景色を美しく縁取っています。摩周湖の南東岸から続く尖峰急峻は、摩周湖の最初のビューポイントを起点とする日帰りの外輪山ハイキングに最適です。北西方向の少し奥には標高が低くなだらかな山が連なっています。その中で険しい形をしているのが硫黄山(標高508m)です。

 硫黄山(アトサヌプリ:アイヌ語で「裸の山」)のふもとからは絶えず蒸気が噴き出しています。地質学的にも魅力的なスポットで、ぼこぼこと泡を立てるお湯、吹き出す蒸気、硫黄のギザギザを凝縮したような強烈なネオンイエローの塊といった「生きた」源泉が、こじんまりした川湯温泉街のすぐ南に存在します。自転車や車ならすぐに行けますが、ここは是非、川湯温泉街からつつじヶ原を経由する自然遊歩道(つつじヶ原自然探勝路)を歩いて行かれることをお勧めします。5~7月には、いくつものふわふわとした白い花を咲かせるイソツツジが一面に咲き乱れ、低木のハイマツが醸す濃い緑とのコントラストに目を奪われます。この特別な「花畑」を越えると山に植物は生えていません。冬にはワイルドでドラマチックな光景が広がります。

 夏の気温が30℃を超える一方、冬は-30℃以下になる日もあります。春や秋には、湖周辺の森が色彩豊かに周囲を彩ります。湖が結氷する冬は、極寒で乾いた空気の影響で温泉周辺の木々に美しく霜が降り、ダイヤモンドダスト(風に乗って漂う氷の微粒子)が人々の視線を釘付けにします。雲海で覆われる夏の湖のたたずまいも息を呑む美しさです。どの季節でも、この地域の魅力は尽きることがありません。

原文(英語):マーク・ブラジル

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北海道川上郡弟子屈町
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